沖縄大学 履修ハンドブック
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 健康スポーツ福祉専攻では、従来の福祉理念であった「ソーシャル?ウェルフェア(social welfar:生活困窮者へのサービス)」から、より前進的な転換を図り、身体的?精神的および社会的に健康で文化的な生活を送るための日々の「生活の質(QOL)」の向上をめざす「ウェル?ビーイング(well-being:幸福な状態?健康な状態のためのサービス)」の理念を掲げ、福祉文化に満ちた社会を実現するための人材育成を目的としている。 今日、わが国の福祉や健康を取り巻く社会環境は、大きく変容し、介護?医療費の急激な増加に対応し、2000年に介護保険が導入され、これまで家族内の問題として処理されてきた介護問題が顕在化し、「要介護」の状態をいかに防ぐのか、あるいは「要介護」になる前の状態をどのように維持していくのかという「介護予防」の考え方が広がりはじめている。また、障がい者福祉分野では、「障がいがあるとスポーツはできない」という従来の考え方に捉われず、「達成感や充実感を得ることで人生や生活の幅を広げる」という文化として、本来のスポーツの醍醐味を味わうことで自らの有能感を高めていく「障がい者スポーツ(アダプテッドスポーツ)」が活発化してきている。加えて、障がい者を取り巻く制度に目を向ければ、障害者自立支援法の制定?施行によって、「自立」や「社会復帰」に向けた具体的かつ綿密な計画に基づいたリハビリテーションの方法や健康運動指導の重要性が益々高くなってきている。 これらの社会的課題や将来的な問題を解決していくためには、高齢者や障がい者の分野において行われてきたように対象と目的を限定した救貧対策的な取り組みだけではなく、人間としての幸せを求めて純枠に楽しむ生きがいや文化的な余暇活動を多くの人に根付かせることも必要である。そのためには、「遊戯」や「遊び」といった語が原義となる「スポーツ」?「身体教育」を、これまでの「福祉文化」の概念に加えることが重要である。そのことですべての人間の「生活の質(QOL)」の維持?向上に取り組むことが可能となり、最終的には日本国憲法第二十五条に明記されている健康で文化的な生活をめざすことにつながる。 これらのことから、福祉文化学科健康スポーツ福祉専攻では、個人、家族および学校、地域社会に広く存在する包括的な身体に関する問題、またこれからも急速かつ著しく複雑?多様化するであろう社会的問題について、深い人間理解と科学的知識を基盤にした総合的かつ実践的に幅広く捉えた教育?研究を行うことを目的とする。具体的には、「身体教育学」、「健康教育学」、「福祉文化学」の三本の柱を体系的に融合させて、健康についての科学的認識?知識を高め、「心身ともに健康な国民を育成」するための教育を実践する。そして、発達段階に応じて「健やかな体」と「豊かな心」をバランスよくはぐくむ教育はもちろんのこと、背景の異なる様々な人に対して「他者への配慮」?「受容と共感」?「共に生きる」?「支え合い」という「“福祉のこころ(福祉マインド)」”を持って生活の質(QOL)の向上をサポートできる実践力を身につけた教員の養成をめざす。さらに、「保健体育」の教員の資格だけでなく、さらなる目標として、健康教育の活動範囲を学校現場から企業?福祉施設、行政機関、地域社会にまで拡大し、官?民?学の連携のもとに地域貢献できる人材育成を行い、「長寿立県沖縄」の再興、そして「健康立県沖縄」の確立を目標とし、「地域に根ざした健康活動」に寄与する優れた指導者を養成することもめざしている。★登録取消期間★ 前期?通年科目 → 5月末  後期科目 → 11月末99健康スポーツ福祉専攻の理念

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